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幕末史ドラマ

幕末史ドラマについて語る PARLO DELLE FICTION SULLA FINE DEL GOVERNO SHOGUNALE DEI TOKUGAWA

最近、幕末を扱ったドラマを
いくつか見る機会に恵まれている。
もっと幕末史を勉強しておけばよかったと思う。

今年の正月に放映された
テレビ東京開局40周年記念の
10時間ドラマ、『竜馬がゆく』を見た。
原作は言うまでもなく
司馬遼太郎の『竜馬がゆく』(文春文庫)。
わたしの青春のバイブル(?!)である。
わたしが人生で初めて読んだ時代小説であり、
時代小説の最高峰である。

中学、高校の頃からの知り合いの方は
もうご存知だろうが、
わたしはかなりの幕末史ファンである。
大学での研究は戦国史であったが、
そうでなければ幕末にしていただろう。
わたしにとってはそれくらい
興味のある分野である。

きっかけは、世界文化社でパートをしていた母が、
「ロマン・コミックス 人物女性の日本史」
(おそらく現在は絶版になっているだろう)という漫画
全30冊を持ってきて、
わたしに与えたことだった。
もともとマンガ好きだったわたしは
それらをむさぼるようにして読み始め、
それを契機に歴史、ひいては幕末史に
興味を持つようになったのである。
特に気に入ったのが
『和宮内親王』と『竜馬の妻お竜』と題された2冊で、
たまたま双方が幕末の話だったのだ。
それで『竜馬がゆく』も読み始めた。
中学三年生の時のことである。

今でも歴史漫画は特に好きで、
『あさきゆめみし』(大和和紀・講談社漫画文庫)、
『天上の虹』(里中満智子・講談社漫画文庫)、
『ベルサイユのばら』(池田理代子・集英社文庫)などは
何度も読み返すほどである。

さて『竜馬がゆく』
何百ページもある分厚い小説全8巻を
10時間のドラマにまとめようというのがまず難しい話である。

わたしが生まれる前だが、北大路欣也主演で
NHK大河ドラマ『竜馬がゆく』が放映された。
もちろん見てはいないのでこれの評価はできないが、
50回の連続ドラマだったのだから、
ある程度の内容のものになったのだろうという察しはつく。

今回のドラマは、どうも中身が薄っぺらい。
どのエピソードも中途半端で終わってしまっているのが残念だ。

主人公、坂本龍馬を演じたのは
歌舞伎役者の市川染五郎
わたしは高校時代からの染五郎サマの大大大ファンである。
しかし彼、まったく龍馬のイメージではない。
細すぎるし小さいし、セリフも歌舞伎発声で
どうもイメージが違う。それにひきかえ、
今年のNHK大河ドラマ『新選組!』で龍馬を演じた江口洋介
ちょっと年がイッてはいるがイメージがピッタリであった。
かつて数々の役者が龍馬を演じてきたが、
他にイメージどおりだったのは
『翔ぶが如く』(1990年NHK大河ドラマ)での佐藤浩市である。
この2人は土佐弁も上手で自然であった。
染五郎サマの土佐弁はどうも浮いているような感じがする。

それから俳優の揃え方があまりよくなかった。
視聴率と話題性を狙って
人気の若手女性タレントを何人か使ったのだが、
演技ができていなくて裏目に出た。
もう15年も前のことになるが同じテレビ東京にて、役所広司主演で
司馬遼太郎の『燃えよ剣』が放映された(1990年)。
有名な俳優は彼と石立鉄男の他には
あまり出演していなかったのだが、
みんながいい演技をしていたし、
ストーリーにも無理がなくておもしろかった。
沖田総司役の役者など、当時新人だった上に
それきり今ではまったく見かけなくなってしまった無名の俳優であったが、
爽やかな沖田を上手に演じていた。

一人『竜馬がゆく』で気を吐いていたのは
勝海舟役の柄本明である。
江戸っ子の役だからなおさらか。とにかく上手い。
同じく江戸っ子役、龍馬の剣の師匠千葉定吉役の藤田まこと
その息子重太郎役の的場浩司
寝待ノ藤兵衛役の渡辺いっけいなどもよかった。

高麗屋ファミリーも結集、
これには少々興をそがれた。
染五郎サマの実姉の松本紀保(武市半平太の妻富子役)、
松たか子(大浦お慶役)、
松本幸四郎(松平春嶽役)。
全員出演していた。
これで叔父の中村吉右衛門が出ていれば
完璧で笑えたのに。

ちょっと染五郎サマをこてんぱんに言い過ぎてしまったが、
龍馬が三味線を弾きよさこい節を歌うシーン、
これを吹き替えなしでできるのはこの若さでは彼しかいまい。
舞踊・三味線お手の物の染五郎サマならではである。さすがだ。
マジで弾いて玄人の歌を聴かせていた。

かつらが似合う俳優というのは存在するもので、
こういう人にこそ時代劇はやってほしいと思う。
例えば武市半平太役の沢村一樹
フジテレビの『大奥』にも出ていた高杉晋作役の葛山信吾
セリフ回しもうまいし、
これからの時代劇界を担っていく俳優たちだと思う。
『新選組!』では久坂玄瑞を池内博之が演じたが、
あの顔ではちょっとモダンすぎる感じがするのである。

それから昨年何かと話題になった若村麻由美
寺田屋お登勢の役で出ていた。
同じくらいの年頃で同じく京女を演じた鈴木京香
(『新選組!』での芹沢鴨の妾お梅)とは
比べ物にならないくらい安っぽいのが残念だった。
鈴木京香の迫力のある演技と妖艶さには圧倒された。

杉良太郎の息子山田純大は、
龍馬の盟友中岡慎太郎役。
彼といえばイメージはNHK連続テレビ小説『あぐり』の長男
ジュンさんこと吉行淳之介の役である。
七光り俳優だが最近では『水戸黄門』第29~31部でも頑張っていた。
以前、ある旅番組を見たら、彼がまるで
ネイティヴのような英語を喋れるという一面を見せており、
とても驚き、惚れた。
彼も時代劇には割と合っていると思う。

ところでこの枠のドラマ、数年前までは、
毎年1月2日に放映される12チャンネル(テレビ東京)の
12時間ドラマという1、2尽くしがウリだったのに、
最近では10時間に縮小されてしまっている。
わたしが初めて12時間ドラマを見たのは、
忘れはしない、中学2年生1月2日
松本幸四郎の『忠臣蔵』であった。
まだビデオが家になくて、
ほとんどをリアルタイムで見たように思う。
既にその頃赤穂城を実際に旅行で訪れていたわたしは、
いくらか忠臣蔵の話も知っていたので、
かなりそのドラマにのめりこんだ。
恥ずかしい話であるが、中学の文集に
忠臣蔵を題材にしたメロメロな詩を一編載せている。
ちなみに松本幸四郎が大石内蔵助役で、
長男の染五郎サマが
役の上でも内蔵助の長男の大石主税を演じていた。
初々しかったなあ。
切腹のシーンなどは昨日見たかのように、
まだ鮮明に覚えている。

昨年出張で日本に帰った際、
地下鉄都営浅草線の泉岳寺駅前にある旅行会社を
営業で訪ねる機会があったので、
そのついでに初めて泉岳寺をお参りしたのだが、
14の頃からの夢がやっと叶った気がした。

また、この頃の12時間ドラマは
確かセブンイレブンの一社独占提供だった。
それまでにコンビニのおでんを食べたことがなかったわたしは、
CMを見てしきりに食べてみたくなったと記憶している。

今年の10時間ドラマは
「ベルーナ」という通販会社の提供。
このベルーナ、
なんと埼玉県上尾市に本社がある。
埼玉が誇る大企業。
ビバ埼玉。
このわたしも一度だけ
ベルーナで買い物をしたことがある。
新聞折り込みのちらしにあった
日本古典全集の漫画がどうしても欲しくて、
昨年亡くなった祖父にねだって
高校の入学祝いに買ってもらった。
ベルーナ万歳。

幕末のテレビドラマを見ていると、
この時代に活躍した人物の年齢がとても気になる。
ほとんどが20~30代の青年たちである。
あんなに多くの長州の志士を育てた吉田松陰なんぞ
29歳で獄死したのである。
タメじゃん。
彼は時代を確実に動かしたのに、
同い年のわたしは何をやっているんだろう。

龍馬は33歳の誕生日に死んだ。
中岡慎太郎は29歳
高杉晋作は28歳
久坂玄瑞なんて24歳
ちなみに明治まで生きのびた維新の豪傑たちは
大政奉還(1867年)の時点で何歳だったのだろう?

徳川慶喜30歳
桂小五郎34歳
伊藤俊輔(博文)26歳
井上聞多(馨)32歳
後藤象二郎29歳
乾(板垣)退助30歳
陸奥陽之助(宗光)24歳

みんな若い。

『竜馬がゆく』のナレーションにあり、
それを聞いて改めて考えさせられたのが、
「○○人」という自分の国籍についてである。
わたしは今、ごくごく当たり前に
「わたしは日本人です」と自己紹介するが、
ほんの200年前の人々は大方
そんな言葉の存在すら知らなかったのだ。
「長州人です」とか「土佐人です」とか言っていたわけである。
鎖国していたんだから当然であるが、
自分がもしそうだったら…、と考えると妙なものである。
「日本人」という感覚がなかったのだ。

とにもかくにも思うことたくさんアリの幕末史ドラマ。

ところで再来年のNHK大河ドラマは
幕末ではないのだが、司馬遼太郎原作の
『功名が辻』(山内一豊の妻千代の物語)で、
仲間由紀恵上川隆也の主演らしい。
土佐がまたもや熱くなる!期待!

日本の歴史ドラマはとにかく質が高い。
素晴らしい。

この頃はヨン様ブームで
韓国ドラマが何でもかんでもウケているという。
ならば白村江の戦いとか豊臣秀吉の朝鮮出兵とか
安重根の生涯のドラマなんかを、
ヨン様キムタクを使って撮って、
日本人に見せたらどうだろう。
みんなこぞって見るだろうし、
手放しで「韓国、韓国」と言ってるネエチャンたちは
今まで知らなかった韓国と日本との歴史を
新たに知ってビビるんじゃないか。
誰かマジで撮って下さい。

(注)「坂本龍馬」「坂本竜馬」
人物名の表記としては前者が正しい。
ただ、司馬遼太郎の作品のタイトルは
あくまでも『竜馬がゆく』であり、
これにならって小山ゆうの漫画も
『おーい竜馬』というタイトルになってしまっている。
ちなみにこの漫画もめちゃくちゃおもしろいのでおススメ!

(2004年12月2日)

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